【書評】「君がオヤジになる前に」 常に変化し思考せよ
2018/05/01
ホリエモン著「君がオヤジになる前に」。
タイトルからもわかる通り、変化し続けることについてひたすら書かれています。
この本の後ろの方は対談となっています。
本全体のうち7割がふつうの形式、残り3割が対談です。
ホリエモンの本をはじめて読むのであれば、ここから手を付けるのがちょうどいいでしょう。
逆に何冊も読んでいるなら恒例の堀江節を拝めるぐらい。
いずれにせよ、ヘコんでいるときのエネルギー源にはなります。
常に変化し思考し続ける
安定を求めようとする努力のプロセスの中で、人は不安定になっていく。そのことに多くの人は気づいていない。むしろ不安定であるという真理を悟った上で、その不安定さの中でうまく生きていくスタイルを取るべきなのだ。だからこそ、思考停止に陥ってはならない。
食習慣の均質化は、思考を停止させる可能性をはらんでいる。
朝食の献立を毎日考えるのは、生産的でとても楽しい作業なのだ。パンでも、カレーでも、パスタでも何だっていいじゃないか。パターン化した流れに安心感を覚え、「朝食に麻婆豆腐はあり得ない」と決めつけるのは、ダメなことの規範を自ら狭めているだけ。こんなにも豊かな選択肢に囲まれた生活を、わざわざ窮屈にするだけだ。
僕は常に今日の食事を何にしようかと考えている。人よりも美味しいものをたくさん知っていることもあるけれど、食事をおろそかにする人は、大きな損失を出していることを認識するべきだろう。
変化を拒絶したり思考停止になることについて、徹底して嫌っています。
年齢的にはオヤジになっても、心はオヤジにならない。
これを考えているのが伝わってきます。
思考停止におちいってしまうと、目の前の生活がどんどん灰色になっていきます。
そうすると目の前の景色すら疑わず、ひたすら同じような毎日を繰り返すばかり。
そういう生活をしていてもおもしろくないでしょう。朝食は納豆とご飯、味噌汁という生活に疑問を持てなければ、生活そのものが変わるということもありません。
食事というのは生活のなかでも簡単に変えられるところ。
献立を考えるというのはすぐに行える思考活動であり、思考し続ける習慣はまず食事からです。
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
他の企業などを見ていて、人徳を集めている社長は大変な人たらしだ。部下のつまらない話を、うんうんと聞いてあげたり、士気を高めるために飲み会を開いたり、その家族まで気遣ったり。部下の心を撫でるケアが行き届いている。
すごいなぁと、皮肉じゃなく思う。そういう経営も、ありなんだろうなと……。
だけど僕には、やっぱりできそうもない。
嫉妬や人物の好き嫌いなど、単なるマイナスの感情にも左右される社内コミュニケーションに何の意味があるのか、さっぱりわからないからだ。
さまざまな成功を重ねて、自分がレベルアップしていくとき、古い仲間は切り捨てていいものだと考えている。レベルアップする以前の仲間と一緒にいるのは、停滞でしかない。
確かに何年も同じ仲間とチームを組んで、成功している実業家もたくさん知っている。
だが僕の見た限り、仕事上の成功は別にして、古い仲間と一緒にいることの実利的な見返りが、それほどたいしたものではないように思えるのだ。
共同体的な空気というのは、合理主義者がぶち当たるカベですね。
世の中みんな合理主義を貫いているわけではなくて、精神的な充実感を重視しているひともいます。
合理主義に則って判断していると、どうしても人付き合いを変えたほうがいいケースは出てくるもの。
感情でひとを動かすということが、合理主義者にとってはむずかしいです。
この本はライブドア事件後に書かれていることもあり、部下の裏切りについてもところどころに現れています。
そのため部下を信頼することに対しても苦手意識を感じており、精神的なものを求めるゲマインシャフト型の付き合い方が理解できないというのが主張です。
実利を求める合理主義やゲゼルシャフトといった考え方は、共同体的な考え方であるゲマインシャフトと対立する考え方です。
実利を追求する様子は必ずしもみんなにいいように映ることはありませんし、時として敵を作ることにもつながります。
この辺はわたし自身も苦手で、現在進行形で苦しんでたり。
ルールや実利で判断する人間にとっては、社会主義的な考え方って合わないんですよね。
こういうのをバランスよく取り入れたのが「部下を思いやる社長」であり、サラリーマンから見た場合の「理想の社長」というやつです。
部下に対して親身に接する様子は、社長の応援団を作ることそのものにつながります。
結果として部下が付いてきてくれるわけで、合理主義者からすればすごいのひとことです。
対談もおもしろい
福本 そう。当時は売れている漫画家を斜に構えて見ていて、俺の才能をわかってくれない世間が悪い、とか思っていた。だけど心の底では、売れている人たちが羨ましかった。せっかく食えるレベルには来られたんだから、いっちょ本気で漫画に人生をぶつけてやろう! 売れるっていうのはどういうことか体験してやろう!と真剣になったんですね。
堀江 仕事を断らないのは成功するための基本姿勢のひとつでしょう。僕も仕事は断りませんよ。討論番組も青年会議所の講演も「アサヒ芸能」の連載も、分け隔てなく受けています。
福本 俺もともと貧乏性だから、来る仕事を断るのは、落ちている金を拾わないのと同じことだと思う。若いうちは妙に気取って見逃していたけど、スイッチが入ってからは、10円でも落っこちていたら、がむしゃらに拾いに行きました。成功するのは、落ちている金を躊躇なく拾える人間でしょう。
対談コーナーもこれまたおもしろいです。
相手は「カイジ」で有名な
仕事をなるべく断らない、現状で満足しないというのは、何もここでしか書いていないことではありません。
しかしホリエモンじゃない人間からもこういうのが出てくるというのは、それだけ重要だし強調したいということです。
あまりに誠実さに欠けるのはさすがにやめたほうがいいですが、できる限り引き受けるというのは大事な姿勢でしょう。
自分で稼いでいる彼らだからこそ出てくる言葉や姿勢であって、雇われ思考では到底出てくるものではありません。
まとめ
この本は思考停止を嫌う考え方について書かれていますが、実用性もあります。
どのようなところで思考・実践すればいいのかというのが具体的で、単に抽象的なものばかりというわけではありません。
食事について思考するところでは朝食を例にあげていますし、社長と経営のところではトヨタについて書かれています。
全体としては、コンテンツとしてもビジネス書としても優秀です。
読むともれなくエネルギーをもらえます。